SunriseはProof of Liquidityのためのデータ可用性層です。
Sunrise開発に至る背景
以下の図は、2023年前半までのレイヤー1のapp chainであるUnUniFiの構成図です。
NFT担保のモジュールと、インターオペラビリティ規格である「IBC」をフル活用したインターチェーンのイールドアグリゲータのモジュールが搭載されたレイヤー1のブロックチェーンでした。イールドアグリゲータはよくある通り利回りを得られるDeFiの運用先に一括で割り当て代行する仕組みですが、それにインターオペラビリティを組み合わせることによって1つのチェーンからいろんなチェーンへの資産一括割り当て代行するという野心的なものです。
なぜこれをやっていたのかというと、「マルチチェーンの時代にFT/NFTの流動性が複数チェーンで分散する」問題をインターオペラビリティ技術により解決する価値があると端的に考えたからです。
これまでUnUniFiコミュニティに試験的に使ってもらい、改善点やニーズを洗い出してきました。さらにインターオペラビリティ周りの技術が発展していく中で、次に進むべき方向性が固まっていきました。それがモジュラーブロックチェーンパラダイムです。
「モジュラーブロックチェーン」パラダイムとは
モジュラーブロックチェーンのパラダイムでは、ブロックチェーンは4つの層に大別できるとされています。
Execution layer (執行層)
・トランザクションを実行する場所。
Settlement layer (調停層。決済層と呼ばれることがある。)
・トランザクションの実行結果を一意に決定し、ブリッジの整合性の監督も行う場所。
Consensus layer (合意形成層)
・どのトランザクションがどの順番で受理されたかを一意に決定する場所。
Data Availability layer (データ可用性層)
・トランザクションデータを保存する場所。
Celestia HPより引用
「データ可用性」層の提供によって実現すること
我々が作ってきたエコシステムには、海外の実績あるバリデータをはじめ、複数のバリデータが集まっています。
そのバリデータセットの価値をさらに引き出すべく、「モジュラーブロックチェーン」設計のための「データ可用性」層(コードネーム:Sunrise)を新たに提供します。
これにより、以下4つが可能になります。
- レイヤー1ブロックチェーン(例えばEthereum)のスマートコントラクトに組み込まれるレイヤー2ブロックチェーンのデータ保存先として使われることで、レイヤー2ブロックチェーンのガス代を大幅に低減する。
- ガス代がもともと小さいレイヤー1ブロックチェーン(例えばOasys)の場合、レイヤー2ブロックチェーンのデータ保存先として使われることで、レイヤー1がキャパオーバーする問題を防いだり、同時に搭載できるレイヤー2ブロックチェーンの数を増やす。
- レイヤー2ブロックチェーン(例えばOptimism、Arbitrum、Astar zkEVMなど)のスマートコントラクトに組み込まれるレイヤー3ブロックチェーンのデータ保存先として使われることで、レイヤー3ブロックチェーンのガス代を大幅に低減する。
- どこのレイヤー1ブロックチェーンのスマートコントラクトにも組み込まれないが、セキュリティの強さ(改ざん耐性、障害耐性)は継承する仕組み「Sovereign rollup」でレイヤー2ブロックチェーンを構築する。
今までのRollupレイヤー2ブロックチェーンの構成
なぜ今までのRollupが高いかというと、レイヤー2運用コストの90%以上がデータ可用性層の手数料と言われており、Ethereum L1をデータ可用性層として使う場合ガス代が高くつくためです。この構成と、上記1,2,3,4の構成を比較してみましょう。
[1] Sunriseをデータ可用性につかうL2 on Ethereumの理論上可能な構成
[2] Sunriseをデータ可用性につかうL2 on Oasysの理論上可能な構成
[3] Sunriseをデータ可用性につかうL3 on Astar zkEVMの理論上可能な構成
[4] Sunriseをデータ可用性につかうSovereign rollupの理論上可能な構成
ユーザー数の多いレイヤー2ブロックチェーンがデータ可用性層をEthereumからCelestia, Avail等のいわゆる「altDA」(Sunriseも含まれる)に切り替えた場合、既にEthereumにEIP-4844 Proto Dankshardingが実装されたことを踏まえても、Data Availability Samplingと呼ばれるスケーラビリティのための機構を備えたaltDAのほうが手数料の観点で有利です。その次の段階のEthereumアップグレードの機能であるDankshardingが来た後も、time to finalityの観点でaltDAはSovereign rollupに優位性を持ち続けます。
そして、UnUniFiは固定金利トランシェ機能を組み込んだ上でより一般的なYield moduleを持つGluonとして、将来的にはSovereign rollup L2としてL1の上に載ることになります。
無関係のモジュールが独立して存在するかのように見えますが、決してそうではありません。Sovereign rollup L2(Gluon)上のYield moduleにより、データ可用性層との連携機能として以下の二つを可能にします。
- L2プロジェクト側のトークンによるvesting付きデータ可用性層利用料金支払い
- Sovereign Proof of Liquidity(独自名称)
L2プロジェクト側のトークンによるvesting付きデータ可用性層利用料金支払い
まず、データ可用性層を提供するプロジェクトは、Celestia、Avail、Near、EigenDAなどがあります。
これらをデータ可用性層として使用する場合、手数料としてそれらのネイティブトークンである$TIAや$AVL等で支払いを行います。
L2プロジェクトの立場にたつと、そのプロジェクトが資金調達したお金を使ってそれらのトークンを購入し、それらを手数料支払いに充てるというお金の流れになります。
仮想的な話ですが、もしこのL2プロジェクトがL2ではなくL1を作っていたら、お金の流れはどうなっているでしょうか?
L1のバリデータに対して、そのプロジェクトのネイティブトークンで報酬を与えているはずです。これは資金調達したお金から捻出するのではなく、プロジェクトの発行トークンで報酬を与えるので、長期的にはプロジェクトの負担になります(インフレでトークンが希釈した分だけ価値をあげる必要性が生じる)が、短期的にはキャッシュが必要という意味でのプロジェクト側の負担にはなりません。短期的なキャッシュに追われないように資金調達してプロジェクトを成長させる立場からすれば、どちらが好ましいかは明白なはずです。
モジュラーブロックチェーン設計でL2を作ることが、全ての面でL1をはじめから構築するよりも魅力的なものであるのが望ましいものとなるには、まさにこのデータ可用性層への手数料支払いがネックとなります。L2プロジェクトがデータ可用性層の使用量支払いをL2プロジェクト側のトークンで支払え、そして「それがすぐに売り圧に繋がるのを回避する施策がとられている」ほうが望ましいという観点に至ります。L2プロジェクトのトークンでデータ可用性層手数料支払いをしたところで、それがデータ可用性層のステーカーに分配されてすぐに売られていては、L2プロジェクトが自分達でL2プロジェクトのトークンを売って売り圧をかけて現金を用意しているのと変わらないからです。
そこで、Yield moduleにて利回りを産みながら長期間ロックする、ということを保証することで、即時の売り圧の回避を保証しつつL2プロジェクトのトークンをSunriseデータ可用性層の手数料支払いに使えるようにするわけです。値段に関してはSunrise側のガバナンスで決定されます。ここもCelestiaやAvailのようなプロジェクトと意思決定が分離されているからこそなせる技でもあります。
同様の文脈で、L2プロジェクト(つまり実行層)のトークンだけでなく、調停層のL1プロジェクトのトークンでデータ可用性層手数料支払いをできるようにすることも視野に入れています。
Sovereign Proof of Liquidity
いままで、L1のブロックチェーンのバリデータのvoting powerであったり、dAppsのガバナンスのvoting powerは、基本的にはProof of Stakeで決められてきました。単純に、トークンをステーキングすればするほど投票力があがるというものです。
ここで、「価値がついてるトークンであればなんでもいいからステーキングしたら投票力が上がる。ただしステーキングされたトークンはDEXとかでいろいろ使わせてもらう」という仕組みをBerachainというプロジェクトが発表しており、これをProof of Liquidityと呼びます。
Sovereign Proof of Liquidityは、これをSovereign rollup向けに改善したアイデアで、
- データ可用性層のネイティブトークン(Sunriseトークン)のリキッドステーキングトークン
- L2プロジェクトのトークン
この二つのトークンをペアでDEXに流動性供給し、そのLPシェアをvoting powerにする、というものです。
これにより、プロジェクトのトークンに対して流動性供給した人に適切に報いることができます。
基本的に、トークンを発行したプロジェクトは、
- ガバナンスに参加してくれた人
- トークンの流動性供給してくれた人
この双方に適切にインセンティブを与えてあげる必要があります。後者に関してはveのようなメカニズムを搭載したCurveのようなDEX内で他のプロジェクトと競争する必要性が生じます(veは各トークンプロジェクト間で競争させることでCurveがインセンティブの分配を効率化するための仕組みと捉えられる)。
この双方へのインセンティブを一括で解消できる策として、Sovereign Proof of Liquidityがあります。
Sovereign Proof of LiquidityはSovereign rollupにて実現させる予定ですが、Sovereign rollupの仕組みへのIBCインターオペラビリティの対応もアナウンスされております。
Sovereign Proof of Liquidityは、トークン経済のあり方を変える絶大なインパクトがあると信じていますが、どちらかといえば長期目線での信念です。漸くインターオペラビリティの重要性がやっと認識されてきた程度です。そのインターオペラビリティ技術に立脚したSovereign rollupがよく知られるにはもう少し時間がかかるでしょう。
短期的には、Gluon Yield moduleと連携した、レイヤー2,3ブロックチェーンのデータ保存先として使われることで実績を固め、Sovereign Proof of Liquidityの世界を着実に実現していくことを目指しています。Celestiaのデータ可用性層をフォークして最新版のCosmos SDKに適合させたというSunriseの生い立ちから、Celestiaデータ可用性層と互換性があるという利点を活かし、さまざまなRollup as a Service (RaaS)との連携も模索していきます。
Sunriseのローンチ日とトークンの詳細に関して
Sunriseは2024年Q2にメインネットを立ち上げる準備を進めております。現在Sunriseでは、パートナーとの調整や社内でのテストを行っております。詳細につきましては、続報をお待ちください。
また、今後数週間のうちに、Sunrise Airdropの詳細も発表する予定です。これは複数のwaveで行われ、対象者はwaveによって変わります。時間の経過とともに、Sunriseのairdropの対象となるユーザーの数は増えていきます。
2024年3月28日現在、Wave 1とWave 2の開始日は未定です。
Sunrise Airdrop Wave
Wave 1: Gluon/ex-UnUniFi($GLU/$GUU)stakers
※GUUは$GLUに名称変更されます。
※スナップショット日は未定
Wave 2: Celestia ($TIA) stakers
※スナップショット日は未定
ウェーブ3:発表予定
ウェーブ4:発表予定
※本airdropでは、初期トークン発行量の7%が配布されます。
※SRトークンに関する詳細はこちら
最後に
本記事は日本向けですが、SunriseはCelestiaの日本国内向けのようなものでは全くありません。
Sovereign Proof of Liquidityといった固有の機能も備えた、modular, restaking時代にグローバルで戦うことができるチェーンです。既にモメンタムのある海外プロジェクトとも話し合いをいくつも進めております。
Modularに興味のある事業者様は連絡をお願いいたします。
HP: https://sunriselayer.io
Discord: https://discord.com/invite/ununifi
X/Twitter: https://twitter.com/SunriseLayer